結局風呂に入れられて、あちこち、というか本当に余すところなく洗われた。何であんなにねちっこいんですか。これが噂のソーププレイって奴ですか。ちくしょう、薺がいたら止めてくれるのに今日に限っていなかったし。
 ってか陵辱フラグ立ててるのはフルーレさんなのに、実際に陵辱してくるのはお嬢様ってこれなんて不思議。どっかでねじれてんのか?
 とりあえず起き上がって、バスルームの鏡を見る。
「……今日は白衣、か」
 もしかして風呂に入れられてなかったらお医者さんごっこでもさせられてたんだろうか。多分俺が患者の方で。
「……これからどうすっかなぁ……」
 とりあえず今日のお勤めは終わったし、どうするかな。何となくベッドルームに戻って窓の外を見る。
 昨日の青い空が嘘みたいに黒い雲が迫ってきてた。まるで侵食されてくみたいだ。
「って、あれ?」
 庭に二つ人影が見える。あれは……薺と蓮華さん?
「何してんだろ……」
 うーん、部屋にいてもやる事ないし、ちょっと見に行ってみるかな。うん。
 部屋を出て、階段を降りて、玄関を開ける。
「薺、蓮華さん」
「あ、おはようございます、遠流様」
「おはよう、蘇芳」
 薺は相変わらずの燕尾服姿だったけど、蓮華さんは今日は丈の短いミニスカナースな服だった。なるほど、だから俺が白衣と。
「何してんだ?」
「台風対策をしていたんです。そろそろ台風が来るみたいですから、少しでも被害を減らそうと思って……」
「あー、なるほど」
 温室にある花は平気だと思うけど、花壇の花はきつそうだもんな。
 ここの花は全部お嬢様の財産だ。お嬢様は何でも出来る天才だけど、特に活け花とファッションがズバ抜けている。だから温室も結構でかいし、花壇も驚くぐらい大きい。
 うん、そんな『財産』がなくなったらショックだしな。俺からみてもこの花壇は立派だし。
 薺と蓮華さんはビニールシートみたいなのを花壇にかけている。もう大分、六割がたビニールシートがかけられていた。
「俺も手伝おうか?」
「え、いえ、大丈夫です! 遠流様の手をわずらわせるなんてそんな……!」
「そうそう、蘇芳はそこで見てればいいって」
「……そっか」
 別にいいのになぁ……そのぐらいやるのに。
 結局全部の花壇にシートがかけられるまで、俺は見てるだけだった。
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