天使病−If I am glad.−
◆進行性奇形肢骨形成病について 2
天使病は通常、発症から二週間以内に末期へと至る事が多い。
多少なりとも家族が関係を維持・改善しようとしていれば末期へと至るまでの時間は長くなる。
しかし末期へと至った場合、共に住んでいる家族を全員殺し、自らもまた死に至る。
最初の発症者、エイコは既に機関に収容されていたため家族は殺せなかったが、
その場にいた担当職員を数人殺害したという。
発症者は十代前半までの子供。
少なくとも今までのケースの場合はそうだった。
面白い事が起きた。
日本の事だが、末期へと至り一度は奇形化したと言うのにまだ生きている少女がいると言うのだ。
彼女はサツキ ミナミと戸籍上ではなっているがマリアと自らを名乗っていると言う。
現在は然るべき施設に収容されているというが……如何なる状況なのか、非情に興味がある。
しかし日本は少し遠い。知人から情報が来るのを待つ事にする。
もう一つ。今日、私の所に天使病の患者が来た。
天使病を発症してから四ヶ月経った男性の患者だ。
彼は、四十代半ばだという。
今まで聞いた事もない。こんな高齢の患者は初めてだ。
正直言うと私は天使病に関わる気がなかった。興味はあったがさほどでもなかった。
しかし彼の到来により気が変わった。
私は天使病を研究する。解明してみせる。この不可思議な病気を撲滅してみせる。
ああ、やはり目標を持つと人間は輝くものだ。私は今、最高に輝いている。
彼の名はラモン=ニールバーグと言うらしい。私の研究施設の一室に泊まってもらう事にした。
ああ、明日からの研究が非常に楽しみだ。
A.G.ルセアリア医師の筆記より。