天使病−Mom,I love you.−

ママ、ほら見てみて。きれいでしょ?

教会でね、劇があって貸してもらったの。

ママ最近元気なかったでしょ?

だから、元気になればいいなぁ、って思って。

あ、お菓子も貰ってきたんだよ。一緒に食べよ?

ねえママ、何で泣いてるの?

何でナイフ持ってるの?



 12月25日
 近所に住む主婦が「家に化け物が入ってきた」として駆け込んできた。
 その必死さと血のついたナイフが気になり、彼女の家に行った。
 そこでは彼女の子供が倒れていた。
 マリオだ。今日の劇に使った羽を背負っていた。配ったクッキーも持っていた。
 彼女にわけを聞くと、「あれが化け物」だと言う。撃退するためにナイフを使ったとも言った。
 仕方がないので彼女を説得し教会にいてもらい、警察と救急車を呼んだ。
 主婦はほどなく連行、マリオは集中治療室の中だ。
 それにしても気になるのだが、彼女は何故マリオが化け物に見えたのだろうか。
 特に薬も服用していないように見えたが……



 12月26日
 マリオは死んだ。可愛そうに、まだ子供だったというのに。
 母親は精神が不安定で、カウンセラーに通っていたという事だった。
 マリオの父親が教えてくれた。彼はマリオたちとは別居中だったという。
 ……マリオが安らかに眠る事を祈る。



 1月25日
 わかった。何故マリオの母がマリオを化け物と言ったのか。
 天使病。背中から羽が生えて徐々に身体全体も奇形になる病気。
 その情報をマリオの母はどこかで得、そして怯えていた。
 いつか息子がそうなるんじゃないかと。ずっとずっと怯えていたのだ。
 そこへ無邪気にマリオが羽を背負ってやってきた。
 ……過度の妄想とはいえ、充分だったはずだ。
 これはもう、偶然としか、不幸としか言いようがない。
 天使病で一つ気がかいな事がある。
 天使病はどのようにして感染するのかわかっていない。
 しかしかかるのは一様に子供で、家庭の状況が悪い時だ。
 これは一体どういうことか。
 親のストレスを受けてしまった子供の自衛本能なのか。
 それとも神の試練なのか。
 どうし

 (この後はビリビリに破かれている)
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